当たり前ですが今日(こんにち)、和傘を街で差して歩いている人はほとんど見かけません。私が生まれた頃にはすでに、ナイロン製やビニール製の洋傘と呼ばれる傘が市場を独占する状態にありました。
市場において洋傘が和傘を圧倒した理由は、和服・着物と同様、生産性やコスト面に大きな差があることは容易に想像がつきますよね。
日本古来からある傘のことを「和傘」、外国から伝わってきたものを「洋傘」と呼び分けていますが、和傘と洋傘の違いは大きく分けて「1.素材の違い」と「2.構造上の違い」にあります。
和傘は和紙や竹、木材など自然由来の素材を用いているのに対し、洋傘はナイロン、ビニールなどの化学製品やスチール鋼材など、主に人工素材を用いている点に大きな違いがあります。
どちらも開閉式の傘の柄の部分を持って使うという点は同じですが、骨の数に大きな差があります。洋傘の骨数が8本ほどなのに対し、和傘のそれは30本以上の骨数で構成されています。
これは和紙の素材が伸縮性に乏しく、また重量もあるため、より多くの竹骨で支える必要があることが原因です。和傘は、本数の多い竹骨で押し上げて開く構造をとっています。
それに対し洋傘の場合、薄くて丈夫なナイロンやビニールといった化学製品を素材としており、少ない骨数で張力を利用して「ピン」と張ることができるのです。
和傘といえば気になるのが防水性ですよね。和傘で使用する和紙には植物性の油が丹念に塗られており、これが雨水を弾いてくれるので、見た目以上に優れた防水性を備えています。
和傘にはその生産地によって、いくつかの呼び名が存在します。
明治の文明開化以降、洋傘が市場を独占するにつれて、和傘を生産する業者は減少の一途を辿り、現在では京都、岐阜、金沢、徳島など一部地域で生産するに留まっています。
構造上の特徴については詳しくは知りませんが、京都で生産されている和傘を京和傘、岐阜で生産されている和傘を岐阜和傘と呼んでいるようです。
番傘は、和傘の中でもスタンダードなもの、実用性があって無地・無装飾なものをいいます。竹骨が太く重厚感があるのも特徴です。
そのシンプルかつ存在感ある見た目から、主に男性に好まれるタイプの和傘です。
「蛇の目」とは、和傘に装飾される紋様のことで、丸い円形のシンプルな紋様が描かれています。また、番傘に比べて細身の竹骨が使用されており、各所にデザイン性のある鮮やかな装飾が施されています。
華やかさに富んだ蛇の目傘は、女性に人気のあるタイプの和傘です。
舞傘は、日差しを遮る「日傘」として利用される和傘です。昼間の明るい時間帯に使用する目的のため、美しい装飾が施されたものが多く、着物によく似合うのも特徴です。
日本舞踊や民謡でも、この舞傘が活躍していますね。実用性よりも軽さ、華やかさやビジュアル面を重視したタイプの和傘です。
野点傘は、屋外茶屋の日除けなどに用いる大型の和傘です。その雄大な姿から、伝統行事・祭事・結婚式などでも活躍しています。
夏に涼しさを演出。和菓子とお茶で一服したくなります!
和装にとてもよく合っていますね。鮮やかな紅色に、大きく存在感があります。